職人
日本では、頑固さはある種の美徳して捉えられることもある。僕の友人にも、職業はなにか聞くと絶対に「職人」と答える人がいる。素人でありふにゃふにゃ軟弱思考な僕は「何の」職人かこそが要点なのではないか?と思ってしまうのだが、彼にとっては職人であることこそが重要なのである。たとえ会話が噛み合わなかったとしてもそこを曲げるわけにはいかない。そしてその頑固さに触れ、僕は”彼はまぎれもなく職人だ……”と理解するのである。
先週の木曜日、僕はいつものようにバイト先の塾で英語を教えていた。
僕「じゃあ問題集の35ページ開いてー」
テストが近いので試験範囲の復習をさせていた。
生徒「あの、問題集もらってないんですけど」
僕「あれ、そうだったっけ?なんでだ…?入ってきたの最近だっけ?」
この生徒は4月にはいた気がするけど……。
生徒「いや、問題集配られたときにはいました」
やっぱり。
僕「えっじゃあもらってるはずだよ」
渡し忘れたのかな……?いやでもそれなら6月の今まで持ってないことに気づかないはずがないと思うんだけど……。
生徒「いえ、家で探しても見つからなかったのでもらってません」
僕「それは君が失くしたんだよ」
それは君が失くしたんだよ。
生徒「いや、もらってないです」
僕「なんでそうなるんだ……」
生徒はいたって真面目である。この子はきっと将来素晴らしい職人になるのだろう……。